コラムのバックナンバー

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師走(2018年12月)

手荒れの気になる季節になりました。
慌ただしく身支度する中で、
お気に入りのニットに手のガサガサが引っかかりほつれてしまうと、
朝から悲しい気持ちになるものです。

 手荒れの原因には、
石鹸、洗剤の洗い残しや水分の拭き残し、
冬場の空気の乾燥やお湯の多用等、
様々なものがありますが、爪の切り方も深く関係しています。
爪は指先の皮膚を保護する役目を持っているため、
深爪すると指先が荒れてしまうのだそうです。
長く伸ばした爪は汚れや細菌の溜まり場になってしまいそうですが、
それらは丁寧に手洗いする事で取り除けます。
手の爪は指先の皮膚が見えるか見えないかの長さで丸く切りましょう。
ちなみに足の親指の場合は、爪をまっすぐに切り、
両端の角を少し丸めるように整えるスクエアカットが巻き爪や陥入爪の予防に有効です。

 どうぞよいお年をお迎え下さい。


霜月(2018年11月)

 秋も深まり、行楽日和が続いています。
ドライブの途中で立ち寄ったファーマーズマーケットには、
鮮やかなオレンジ色の柿と並んで
むかごが売られていました。

 むかごは山芋の茎の一部が丸くなって出来た肉芽で、
地下にできる芋と同様に消化酵素のアミラーゼや
必須アミノ酸のアルギニン等、豊富な栄養素を含んでいます。

 ところで山芋の皮を剥いで乾燥させた物を山薬(サンヤク)といい、
滋養強壮に効果のある生薬として古くから用いられて来ました。
漢方処方としては啓脾湯や牛車腎気丸、八味地黄丸等に、
また忍者の携行食にも配合されていたそうです。

 ファーマーズマーケットで買い求めたむかごは、
早速、ご飯と炊き込んでいただきました。
秋ならではの山の幸の味わいに贅沢な気分になりました。


神無月(2018年10月)

残暑をなんとかやり過ごし、
空に浮かぶうろこ雲やすじ雲に秋の訪れを感じてほっとしたのも束の間、
また台風がやって来ています。
先日の台風では親元を離れて初めての停電に見舞われ、
日の暮れと共に暗くなっていく部屋でなすすべもなく、
日頃の防災準備の手薄さと電気のありがたみを思い知る事になりました。

 災害時に役立つ物の一つにお薬手帳があります。
普段、飲んでいるお薬についてだけでなく、
過去の服薬歴や副作用歴がこれ一冊でわかり、
また、今、薬を飲まれていない方にとってはそれを証明する手段となり得ます。

勿論、災害時だけでなく、医療機関を受診した際、
処方薬による副作用発現の可能性や
常用薬との飲み合わせを確認するのにも必要です。

受診の際は、お薬手帳を持参することを習慣づけましょう。
なお、お薬手帳に関しては、お近くの薬剤師までお声掛け下さい。


長月(2018年09月)

超話題の映画「カメラを止めるな!」を観に行ってきました。
ネタバレ厳禁のため詳細は控えますが、
冒頭のゾンビ映画の撮影風景から心温まるラストまで、
とても面白い展開で、最後まで目が離せませんでした。

 この映画の中で印象的に使われる小道具の一つにミネラルウォーターがあります。
店頭や通販で気軽に買えるミネラルウオーターには、
カルシウムやマグネシウムの含有量の多い硬水と、少ない軟水がありますが、
薬を飲む時にはどちらの水が適切かご存知でしょうか?

一部の骨粗鬆症薬や抗菌剤は、極端な硬水で服用すると、
それぞれの成分が結合して効果が弱まる可能性があるので注意が必要です。

薬を飲む時は、外国から輸入され、特に便秘解消やミネラル補給を謳ったミネラルウオーターは避けるようにしましょう。


葉月(2018年08月)

猛暑日が続く中、突然、冷蔵庫が壊れました。
気づいた時には氷や冷凍食品はほぼ溶けており、その後、庫内は徐々に室温に。
幸い部品の交換で直りましたが、
修理完了までの6日間、家に冷たい物が置けない、という、
なかなか面倒な体験をしました。

 ところで医薬品にはそれぞれ「室温」や「冷所」等、保管に適した温度がありますが、
これらが具体時に何度を指すかご存知でしょうか?

医薬品の規格基準書である日本薬局方では、室温は1℃〜30℃、
冷所は1℃〜15℃と規定されています。特に指示のない場合、医薬品は室温で、
日の当たる場所や湿気を避けて保管して下さい。
室温保管の医薬品を冷蔵庫に入れると、取り出した時に結露し、
湿気を吸ってしまう事があるので注意が必要です。
また、特に夏場は車の中が50℃を超える場合もあります。
車内に置きっぱなしにしないようにしましょう。


文月(2018年07月)

 連日の暑さで汗にまみれた白物衣料をすっきりさせようと塩素系漂白剤につけたところ、襟元がみるみるピンクに染まっていきました。
漂白剤と、洗い残した日焼け止めに含まれる紫外線吸収剤が反応してしまったのでした。

 日焼け止めには「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の二つがあります。
紫外線を熱など別のエネルギーに変換する紫外線吸収剤は、紫外線防御力が高い上に皮膚に塗っても白くならず、
使い心地もなめらかですが、まれにアレルギー反応を起こす人がいます。

 一方、粉末が肌の表面で紫外線を跳ね返す紫外線散乱剤は、少々白くなりますが、肌への負担が少なく、
アレルギーを起こす事はほとんどありません。
 一般的に日焼け止めにはこれら数種類が組み合わされて入っていますが、
紫外線散乱剤のみを含んでいる物も、主に子供用、敏感肌用として市販されています。
日焼け止めの効果や特徴はそれぞれの商品によって異なります。
購入する際には、記載されている説明をよく読み、目的に合わせて選びましょう。


水無月(2018年06月)

実家の芍薬の花柄を摘みました。
毎年、初夏になると咲く大振りの花は母が遺してくれたもので、手入れをしていると久しぶりに母と話せているような嬉しい気持ちになります。
 艶やかに咲く芍薬は、花を楽しむだけでなく、古くから生薬としても使われて来ました。
乾燥させた根は筋肉の痛みや緊張を緩める働きを持ち、葛根湯や芍薬甘草湯など多くの漢方処方に含まれます。
女性三大漢方薬と言われる当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遙散にも芍薬が含まれていますが、その内の当帰芍薬散は、「立てば芍薬」を地で
行くようなたおやかな女性に処方される事が多く、その様子を「当芍美人」と呼ぶそうです。
 芍薬の花言葉は「はじらい」や「慎ましさ」。「たおやかさ」と共に、年々、忘れがちになる言葉ですが、時々は思い出し、日々の振舞いを反省したいと
思います。




P.M.MIHO


皐月(2018年05月)

早くも夏日を観測し、汗ばむ事も多くなってきたこの頃、手に取りたくなるのが麻の洋服です。見た目に涼しく肌触りのよい麻は、
通気性、吸水性に優れた、夏にぴったりの素材です。
 リネン(亜麻)やラミー(苧麻)、ジュート(黄麻)等、繊維として幅広い用途に使われている麻ですが、その総称には、幻覚作用を持ち法律で規制されている大麻も含まれます。
大麻草の花や葉に含まれるテトラヒドロカンナビノールは脳神経のネットワークを切断し、やる気や学習能力の低下、幻覚作用等を引き起こします。また、薬物を強烈に欲する
「精神依存」、薬物が切れると手の震えや下痢等不快な症状を起こす「身体依存」を形成し、使用者を、やめたくてもやめられない薬物乱用へと駆り立てます。
 薬物事犯での検挙数が高止まりする中、大麻事犯の検挙数は増加傾向、若年化傾向にあります。
薄着になり、開放的な気分になりがちですが、薬物乱用ダメ。ゼッタイ。


P.N.MIHO


卯月(2018年04月)

野菜の保管庫を覗くと、じゃがいもの芽が、まるで鬼の角のようにニョキニョキと生えていました。
皮を剥くのが面倒、と、つい料理するのを後回しにした挙句、芽を大きくえぐり取るという余計な手間がかかるのでした。
 美味しく栄養豊富なじゃがいもですが、そこから精製されたバレイショデンプンは、オブラートの原料としても使われています。
今ではゼリータイプも出回っていますが、丸型、または袋状オブラートの正しい使い方をご存知でしょうか?
オブラートをそのまま口に入れると、口の中に貼り付いてかえって危険です。薬を包んだオブラートをスプーンに乗せ、予めお皿に入れておいた水に浸し、ゼリー状になったら噛まずに飲み込みましょう。
この時、余分な水分をしっかり切る事が、誤嚥を防ぐ上では大切です。
 かつて硬い煎餅の様だったオブラートを、柔らかく、使いやすい形にしたのは、明治時代の三重県の医師、小林政太郎さんだそうです。
開発者が同県人という事で、ぐっと身近に感じ始めたオブラート、時々は使ってみようと思います。

P.N.MIHO


弥生(2018年03月)

子供の頃から趣味は読書で、暇さえあれば本や新聞、チラシですら読んでいたい、本好き、と言うよりは文字好きでした。
大人になってまとまった時間が取りにくくなり、読みたい本を買うものの積読状態で、文字への満たされない思いを抱えていた私の生活に入り込んで来たのがスマートフォンです。
短時間で知りたい情報を得る事が出来、ついでに興味をそそられる記事から記事へと読み漁り、気が付けばかなりの時間をスマートフォンに捧げていたのでした。
 スマートフォンやパソコン等、デジタル機器の画面を見ている時、私達の瞬きは読書時の1/4程に減っていると言われています。画面に集中すると瞬き自体も浅くなるため、
目の表面に涙液を正常に供給出来なくなり、目が乾燥し傷付きやすい状態となります。更にデジタル機器から発せられるブルーライトや画面のドットによっても目は過度のストレスを受けています。
 今や生活に必要不可欠となったデジタル機器ですが、使用時には部屋の明るさや湿度に気を配ると共に、意識的に瞬きを多くする、連続使用は50分以内にとどめ休憩時には伸び等の全身運動を取り入れる、画面から目は50cm以上離す等、目を労わりつつ上手に付き合って行きましょう。


P.M.MIHO

如月(2018年02月)

まだまだ寒い日が続いていますが、デパートのショーウインドウにはピンクや黄色、水色といったカラフルな洋服が並び、ひと足早い春の訪れを告げています。

 東洋医学には、季節や方角、色や臓器等、自然界の全ての事柄を五つに分類する「五行説」という考え方があります。
それによると、春に対応する方角は東、その東を守る古代中国神話の聖獣は「青竜」、そして、青竜に当てはめられる生薬は「麻黄(マオウ)」となります。
これは、麻黄の薬用部位が青い事と、体内の水を司る作用を竜に例えた事に由来するそうで、その名も小青竜湯という漢方処方には麻黄が主薬として
含まれ、風邪や鼻炎に用いられます。

五行説で春の色は青。爽やかな青色の洋服を手に入れて、春を待ちたいと思います。


P.M.MIHO


睦月(2018年01月)

平成30年、本年もよろしくお願い致します。

私たち薬剤師の中には学校薬剤師として活動を行っている薬剤師もいます。
その活動の一環として、担当校で環境衛生検査を行いました。
環境衛生検査とは、飲料水やプール水、教室の明るさや温度・湿度・二酸化炭濃度等が
適正に保たれているのかを確認する検査で、年間を通して計画的に行っています。
スムーズかつ正確な検査が行えるよう予行演習をし、若干の緊張と共に学校に伺うのですが、
先生方の温かなお出迎えと検査器具を取り囲む生徒さん達の興味津々な様子が嬉しく可愛らしく、
とても楽しい仕事です。

ところで空気の乾燥するこの時期、湿度が健康に大きく影響する事をご存知でしょうか?
湿度が低いと口や鼻の粘膜が乾いて防御機能が低下し、
インフルエンザ等のウイルスに感染しやすくなります。
また、ウイルス自体も活発となり、感染のリスクが高まります。
それ以外にも、皮膚からの水分の蒸発が増え、かくれ脱水と言われる状態になる可能性もあります。
室内の最適な湿度は50〜60%と言われています。
適度な水分摂取をしつつ、加湿器を使用したり濡れたバスタオルを干す等、
乾燥対策を心掛け、毎日元気に過ごしましょう。

P.M.MIHO